実用化まで10年も?寄生虫で高精度ながん検診が可能になる日
つい先日、がん患者の尿に含まれる特有の臭いを、犬並みに嗅覚の優れた寄生虫である”線虫”に嗅ぎ分けさせてみたところ、95%以上という驚くべき精度でがんを判別してしまいよった(゚〇゚;)…と言う、がん診断に関するすんごい報告がありました。
今回はこのトピックスについて、色々と調べたこと、そして感じたことなんかをあれこれ書いてみたいと思います。今回もかなり独断と偏見と妄想が入り交じっているので話半分ってことで。
日本のがん検診の受診率が低い理由
これまで一般にがん検診と言えば・・・
- 胃がん → 胃のエックス線検査、内視鏡検査
- 肺がん → 胸部エックス線検査や喀痰細胞診(※)
- 大腸がん → 便潜血反応検査
- 乳がん → 触診、マンモグラフィー
- 子宮頸がん → 頚部細胞診
(※)痰の中にがん細胞が混ざっていないかを調べる検査です
こんな感じで、がんの種類別に検査方法が分かれていました。
(一度の検査で様々ながんの有無を高精度で診断できる”PET検査”なるものもありますが、検査費用が10万円前後と高額ですので、気安く受けることができる検査とは言えませんよね。)
また、エックス線検査や便潜血反応検査、喀痰細胞診などは、たいした負担はありませんが、胃内視鏡検査や乳がんマンモグラフィー検査などは、痛みを伴う場合がありますし、子宮頸がんの頚部細胞診などは、やはり心理的抵抗のある検査だと言えます。
日本のがん検診の受診率は、最近は随分上がってきているようですが、まだまだ欧米諸国のそれと比較すると低い水準だと言わざるを得ません。その理由は、やはりこれらの”面倒で痛くってお高い”てな要因が影響していると考えられています。
手間なく、安価に、高精度でがんの有無を判別!でも・・・
これに対して、今回の線虫による検査技術が実用化されれば、通常の検尿検査と同じ手間だけで、あらゆるがんの診断が可能となるわけです。また、これまでのがん検診では発見が難しかった、ステージ0やステージ1の早期がんも、高精度で判別できるだけでなく、検査費用も100円~数百円程度と、金銭的負担もほとんどありません。
一日も早い実用化が待たれるところではありますが、研究チームによると実用化までにはまだ10年近くかかるとの見通しが示されています。なんでも、さらに判定精度を高めて、いずれはがんの種類の特定もできるようにすることが目標なのだとか。
確かに、線虫に「あなたの体のどこかにがんができてますよ~」なんて教えてもらったところで、がんの発症部位を特定するために、あらためて前述の検査をしなくちゃならないとなると、現段階の技術のままではその恩恵はあまり大きくないのかもしれません。
現段階でも利用価値はあるのでは?
ただ、がんを発症しているか否かが分からない状態で上記の検査を受けるよりも、どの部位に発症しているかまではわからないけれど、この体のどこかにがんを発症している可能性が高いと認識した上で、上記の検査や医師による問診によって発症部位を特定していく方が、遙かに効果的かつ効率的じゃないかと思うんですよね。
ちなみに、今回の実験において、がん患者をがんと診断できた確率(感度)は95.8%、健常者を健常者と診断できた確率(特異度)は95.0%と、驚くべき精度を誇っています。
その一方で、現在一般的に行われている血液検査によりがんの有無を判別する”腫瘍マーカー”で、今回の実験で対象となったがん患者を検査してみたところ、がんと診断できた確率はたったの16.2~25%に過ぎなかったのだとか。
http://news.mynavi.jp/news/2015/03/12/358/
そもそも腫瘍マーカーはがんの早期発見にはあまり役に立たないみたいですし、こと”がんの早期発見”可能性という観点から考えれば、たとえ現時点での”線虫がん診断”では発症部位の特定はできなくとも、利用価値は十分にあると感じるんですがいかがでしょ。
線虫が市販されれば家庭で簡単がん検診
と言うか、今回の実験で使われた線虫は、生物実験でごくごく一般的に使われていて「C.エレガンス」という名前で呼ばれる線虫なのだそうで、飼育も非常に容易なんだそうな。
具体的な検査手法も、本当は”研究者にしかわからないコツとかレシピみたいなもの”があるのかも知れないけれど、説明だけ聞いてると、シャーレ上にばらまかれた線虫の上に、尿を1滴垂らして反応を観察するだけ…なんて、とっても簡単そうですし、なんなら線虫君だけでも、格安で販売してくれないかなぁ~なんて思ったのは僕だけじゃないはず。